武田和命さんについて(1)

2006/03/19 日曜日 - 20:57:47 by tshibuya

武田さんの名前をはじめて聞いたのはぼくが日比谷クラブで仕事をしていたとき、23歳くらいのころだった。武田っていうコルトレーンみたいなサックスがいるんだってさ、と誰かが話していて、そのころはコルトレーンが全盛で(全盛という言葉はおかしいのだけれどそうとしかいいようがない)、だからコルトレーンのように吹くというのは一種の賛辞だった。
どうしても聴きたかったぼくは武田さんのやっているクラブに出かけた。そのころはミュージシャンだったらわりと自由に楽屋に出入りできたのだ。しかしそのときの武田さんは大人数のバンドの一員でソロなどはしていなかった。
はじめて聴いたのは銀座松屋裏にあったジャズギャラリー8だったと思う。銀巴里のセッションにもきていたはずだが記憶にない。

そのジャズギャラリー8で一番鮮明に憶えているのは、山下洋輔(と思う)、滝本国郎(b)、富樫雅彦(ds)とのカルテットの演奏で、この日はなにかのセッションだった。しかしこのころはもう武田さんと話したりしていたからその前にどこかで会ってるんだと思う。
ちょっと話が逸れるけれど、このときいっしょにいた浅倉功一(tp、いま帯広にいる)が富樫に、「よう、ボーヤが叩きたそうだから叩かせてやれ」といってステージに上ったのが豊住芳三郎(ds)だった。
このときの光景が忘れられない。曲はサマータイム。武田さんのテナーはもちろんすばらしかったけれど、このとき主役になったのは豊住さんだった。
だれも知らないこのボーヤの演奏が終わったとき、お客さん、ミュージシャン、要するにその場に居合わせた全員が盛大な拍手を送ったのだ。一夜にして豊住芳三郎の名は知れ渡った。

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